はてなミント

音楽について書きますー

あのみずいろの先へ

この記事は、ひいらぎさん主催の文章企画「おすすめCDアドベントカレンダー」の22日目のものとなっております。

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抹茶ミントです。

 

クリスマスって………知らない!

たとえ聖なる季節でも、わたくしは律儀に無信仰を貫きます(センシティブな内容が含まれるツイートです)

 

 

12月1日から、1日1枚CDを紹介する文書リレー企画の22日目。

本日のディナーは、こちら。

帰りの会「第三呼吸速度」

第三呼吸速度

第三呼吸速度

music.apple.com

素顔を隠して活動する5人組バンド、帰りの会

キャッチーな中に儚さが感じられるバンドサウンドが特徴です。

今作は、2022年3月リリースの7曲入りミニアルバム。

今回は時間があんま無かったので、アルバム内のある1曲を特筆してお伝えします。

 

その曲こそ、M5「春のせい(album ver.)」。

以下、詳しく語っていきます。刮目して見よ!

 

線路下の短いトンネルを抜けると

まず、このアルバムを通しで聴くとき、「春のせい」は5曲目(以下M5と表記)にあたります。

M4「架空」は、スローテンポなバラード。

「明日で世界はおしまいだってさ」という歌詞を最後に、ギターのノイズがぷつりと切れるところで、静かに曲が終わります。

その後、無音状態が数秒続いたあと、息を吸って「線路下の短いトンネルを抜けると」と歌い出して始まる「春のせい」。

一つのストーリーの終わりとも取れる「架空」から、明るくハイテンポな「春のせい」が始まり、一気に晴れやかになります。が。

この歌い出しの歌詞が「トンネルを抜けると」なんですよね。

聞いたらより分かると思いますが、アルバムのこれまで4曲の「夜・暗い・雨」といった世界観からスッと開ける感覚と、「線路下のトンネルを抜けると」という歌詞が見事にリンクしているのです。

そして、このフレーズが特に優れているのは、歌詞から連想できる情景の圧倒的な美しさです。

トンネルから抜け、雨上がりに光が差し込む光景。アルバムのストーリー、曲調、メロディーと美しく調和したこのフレーズは、まさに"芸術"。

脳内の情景に音が沁み入るような感覚……感情を支配されます。

 

開けっぱなしのカーテン

1A「開けっ放しのカーテン 鈍色 六畳間」

鈍色、六畳間!?

この単語の組み合わせ、やばいです。

【鈍色・・・つるばみで染めたねずみ色】

すごく鮮明に情景が浮かぶ表現なのですが、説明臭い感じはなく、ただの名詞3つの羅列。

鈍色と六畳間、でも、灰色六畳間、でもない。どんよりとした空がただそこにあるように、カーテン・鈍色・六畳間。

ちょっとした言葉選びのセンスが光ります。

 

この心臓が〜

1A後半の4小説、ギターの裏メロが入ります。

歌の後ろで、結構えげつないフレーズを弾いています。それでも、歌もギターもバランスよく聞こえるという神業。

ボーカルと被らないような、また不協和音にならないような絶妙なラインを計算された、技巧的な裏メロです(歌メロの半分の拍で裏メロが進むのが、急かすような、焦るような感じに繋がっている気がします)

この後のBメロに繋がるために、徐々にアレンジを加えるというのも、計算された感じがしますね…

 

遠く鳴ったサイレン

サビが終わり、間髪入れず2Aに流れ込みます。この、間奏を挟まないスピード感が、疾走感や爽やかさと儚さを演出しているよう感じます。

1A「開けっ放しのカーテン 鈍色 六畳間」
2A 「遠くなったサイレン 零れ出す錆色」

カーテン↔︎サイレン、鈍色↔︎錆色という対比が面白い。というか、零れ出す錆色って夕焼けのことなのかな。

こういうお洒落ができるバンドに日本の未来を託したいってずっと思います。

 

忘れていたこと 忘れていくこと

ここは、左右のイヤホンで交互にギターが鳴るようになっています。さすが、ギター2人編成のバンドは音の厚みが違う。

「忘れていたこと 忘れていくこと 寂しくないのが寂しいこと」

という、対比・逆説的な表現に合わせるように、左右から交互にギターが鳴るという遊び心。一つに定まらない心を、左右から音で引っ張られるような、そんな感覚すら覚えます。

先ほどは「ストーリーと歌詞の一致」でしたが今回は「歌詞とアレンジの一致」。ただメロに言葉を乗せているだけではないのが本当に頼もしいです。

 

また明日、じゃあねを使い切ってしまう前に

2サビ後のDメロ。

歌の裏で、イントロのギターのリフを重ねていて「エモ!」となります。3分越しの伏線回収のような気がしてニクいです、もはや。

「あのみずいろの先へいこう」は、水色の街という彼らの曲に準えたフレーズ。鈍色、錆色ときて「みずいろ」と展開するのが感動ものです。どんよりとした暗さ、寂しさ、虚しさを経て「希望」の水色へと向かうという、青春純度120%の表現にもれなくグッときます。

 

 

 

〜〜〜

こうして「春のせい」は終わり、M6「ユーリカ」へと続いていきます。

いちいち素晴らしい仕掛けを施しているけど、最後は青さとか儚さが広がる、というのが「帰りの会」の真骨頂です。映画みたいなんですよね、曲といいアルバムといい、世界観が。

 

まとまりのない文章になってしまいましたが、よかったら聞いてみてください。

 

 

最後に、この企画を主催してくださったひいらぎさんに、最大限の感謝を………

昨日の分の記事(珉さん)も、すげえ綺麗な文章で、愛…って感じで良かったので読んでね。

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次は1日空いて24日、栗花落さんです。お楽しみに。

 

それでは!